世界宗教の神は天災を司る唯一存在ですが、それに対して日本の神様は、自然の働きそのものと言われます。「山へ行って木の切り株に腰をおろして休んでも、立つ時には礼を言う心持ちになれ」という伝承者不明の格言も、以下のような外国由来のお話を読むと理解が深まるのではないでしょうか。簡単にあらすじをご紹介。

リンゴの木と少年は友達だったので、少年がお金に困っていることを知った木は「私の果実を売りなさい」と言い、少年は果実をすべて持っていった。

今度は大人になった少年が家を欲しがり、木は「私の枝で家を建てなさい」と言う。また時が経ち、人生に揉まれた少年は「心がボロボロなのでもう遠くへ行きたい」と言う。木は「私の幹で舟を作りなさい」と言う。少年は幹を持っていった。さすがに別れとなるのは、木にはうれしくなかったろう。

時が経ち、少年は年老いて帰ってきた。そして「体もボロボロなので休む場所がほしい」とつぶやく。木は「切り株の私に腰をかけなさい」と言う。少年は腰かけた。木は幸せだった。

『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン 作 1964年)