ある時、四十歳くらいの男が子供を背負って、門まで来ては帰り、幾度も来たり帰ったりしているのを集まっていた信者が見て、「金光様、あの人はどうしたのか、参りそうで参りませんが」と申したら、
「あれは、親が死んで忌みの内であるからと思って、遠慮して参れずにいるのである。此方には忌み汚れはないから参ってもよいと言ってやりなさい」
と仰せられ、その人はそれから金光様の前に出てお願いした。(2)この人は、はじめ田地一町二、三反もあったが、しだいに不運で、ついに農具まで売って生活しているという。金光様は、
「その方も、なかなかめぐりの深い者であるなあ。けれども、信心は物や金がなくてもできる。親が死んで忌み汚れがあるからといっても、信心はしてもさしつかえない。信心をするのに物や金はいらない。そういう身なら線香を六本買って、二本は天地の親神様へ、二本は先祖様へ、二本は神々様へと言って供えよ。(3)そうしているうちには、今から半年ほどすると奥州で戦争があって、上から人夫を召される。財産の高に応じて人夫を出すことになるのであるが、金持ちは危ないと言って出ないから、それを代わって出てやれ。今度の戦争は向こうが逃げる一方であるから、危ないことはない」
と言われた。(4)すべて、そのとおりに戦争が行われ、人夫が召されたので、その人は代わって出てお勤めした。日に二朱かの日当となり、代わって出てあげた方からももらって、それを元手としてもとの身代となった。