理2・桂松平・1

山口県柳井町にいたころ、出入り商人明田角太郎から金光大神の話を聞いた。母親は早くからお道の話に心を寄せ、常に松平に信心をせよとすすめていた。ある時、
「若い者が信心すれば、四十までに家のめぐり、身のめぐりを取り払ってやる」
との金光様のみ教えを明田角太郎が話しているのを聞いて、松平の心は動いた。(2)松平は、それまで拝んでいた金比羅様にお伺いしてみようと、金比羅様の神前にぬかずいた。そして、おもむろに心気を静めて水晶の数珠をさらさらと押しもみ、「明田角太郎の信ずる金光大神が真の神なら、十回が十回とも『丁』の数でお示しください。述懐の内、一回でも『半』の数が出ましたなら、邪神と信じ、今日以後、心にも留めません」と、さっと両手を開けば「丁」、十回は十回とも「丁」、さらに三回試みても、いずれも「丁」であった。
(3)「これほどご神徳の高い神様を、狐とも狸とも得体が知れないなどと申しあげたご無礼をお許しください。金光様が明田角太郎を差し向けてくださり、この松平親子をお助けくださるのである」と思い、「今日から心を定めて一心に信心さしていただきます」と誓った。そして、何とかして備中の生神様にお目にかかりたいとの念願を起こし、常に心を金光様の広前に走らせていた。
(4)明治十六年の春のころ、新屋敷花屋の老婆の代参をすることになった。松平は「金光様、日ごろの念願をお聞き届けくださいまして、お引き寄せがいただけます」と合掌してお礼申しあげ、躍るような心で勇んでお参りをした。金光様はちらっと松平の姿を見られたまま、十数人の参拝者にねんごろにご理解をなさっていた。松平ははじめてのことであり、どうしてよいかわからないままに、人の後ろに小さくなって、じっとひとみをこらしていた。(5)やがて、金光様は、一とおりのご理解を終えられたのか、
「周防の国のお方、遠方をよくお参りでしたなあ」
と仰せられた。
(6)金光様のご神徳に打たれ、恐れ入ってしまった時、金光様は静かにご神前に進まれ、柏手を打たれて、すぐにご裁伝で、
「氏子、水が毒、水が毒というが、水を毒と思うな。水は薬という気になれ。水を薬という気になれば、腹の病はさせない」
と仰せられ、続いて、
「氏子、水あたりということを言うなよ。水がなくては一日も暮らせまい。大地は何とある。みな、水がもと。稲の一穂も五合の水をもって締め固めるというではないか。水の恩を知れよ」
と厳かに仰せられた。
(7)松平はありがたくてありがたくて、身をふるわせて平伏していた。お結界の机に帰られた金光様は松平に向かわれ、お言葉いと優しく、目には微笑をたたえられて、
「周防の国の氏子、狐であろうか狸であろうかと思った疑いが晴れて、結構ですなあ」
と言われた。松平は千里見通しのご神徳に驚き入り、穴があれば入りたいほどの恥ずかしさで、ただただ恐れ入るばかりであった。

  1. 理3・内伝・13

  2. 理3・内伝・12

  3. 理3・内伝・11

  4. 理3・内伝・10

  5. 理3・内伝・9

  1. ご伝記 金光大神(昭和28年刊行版)

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