ひょっと、心細い、もの恐ろしい不思議な心持ちになってきて、合点がいかぬからお伺いしたところが、盗難のお知らせじゃ。そこでご一心しておったら、盗難もなしにすんだ。(2)しばらくすると、だれが言いだしたのか、「才崎の金光様へ賊が入ったが、金光(片岡次郎四郎)様がご祈念をなさると、手足がなえて立てぬようになった。それをお父さん(片岡亀三郎)がお断りをしてやられたら、ようやく動けるようになって、賊も心を入れかえて真人間になったそうな。ご信心というものは、えらいものぞなあ。おかげなら、ありがたいものぞなあ」という評判が立った。この近傍ばかりではなしに、とうとう大谷の方へも聞こえたり、見舞いが来たりした。
(3)不思議でならぬから、またお伺いしたところが、「天に口なし、人をして言わしむ。神が諸人の口を借って、このうわさを立てさしたのぞ。かねて知らしてある盗難も、このうわさで逃れるように、おかげを授けたのぞ。これが神信心の徳、神の方便というものぞ」とおっしゃったが、ご信心しておれば、ありがたいものじゃろうがな。